「Salesforceは営業管理のツール」——そう思っていませんか。実際には、見積・受注・発注・納品・請求という一連の業務フローを、Salesforce一つでつなぐことができます

受注後の管理をExcelや個人のメモで行っている中小企業では、「受注したのに誰も発注していなかった」「納期を確認するたびに担当者に聞かなければならない」「月末の売上集計が手作業で大変」という問題が起きがちです。Salesforceで受注後の業務フローを整備すると、こうした問題をまとめて解消できます。

この記事でわかること
  • 見積〜請求を一気通貫でSalesforceで管理するメリット
  • 各フェーズでSalesforceを使ってできること(具体的な設計例)
  • 受注後管理に必要なSalesforceの機能と設計の考え方
  • どこから始めるか——段階的な構築アプローチ

「見積から請求まで」の全体フロー

中小企業における受注関連業務の典型的な流れは次の通りです。Salesforceはこのフロー全体をカバーできます。

引合・商談
営業フェーズ管理
見積
見積書作成・承認
受注
受注確定・登録
発注
仕入先への発注
納品
納期管理・完了確認
請求
請求書発行・入金確認

このうち「引合・商談」は多くの企業がSalesforceで管理しています。しかし受注後(発注〜請求)の管理はExcelや口頭に頼っているケースが多く、ここに業務の断絶が生じます。

受注後管理をExcelに頼ったときに起きる問題

業務 Excelのみで管理 Salesforceで管理
受注情報の共有 担当者のExcelにしかなく、不在時に確認できない 誰でもリアルタイムに参照・更新できる
発注状況の把握 「発注したっけ?」が頻発。二重発注・発注漏れが起きる 発注済み・未発注が一覧で見える。漏れをアラートで検知できる
納期管理 納期確認のたびに担当者に聞く必要がある 納期・進捗をSalesforceで一覧管理。遅延案件が即座に把握できる
売上集計 月末に複数のExcelを手作業で集計。ミスが起きやすい 受注データから自動集計。リアルタイムで売上状況を確認できる
請求管理 請求漏れ・入金確認漏れが発生しやすい 請求ステータスを管理し、未入金の案件をリストアップできる

各フェーズでSalesforceをどう使うか

見積フェーズ

SalesforceはSalesforce CPQ(Configure, Price, Quote)という見積専用機能を持っています。ただし中小企業では導入コストが高いため、商談レコードに見積情報(商品・数量・単価・合計)を紐づける形が現実的です。

Salesforceでできること
見積情報の管理
商談に見積明細を紐づけて管理。見積版数・承認ステータスも記録できる。見積書の作成自体はExcelを使い続けても問題なし。
実装のポイント
商談の項目設計
商品名・数量・単価・見積合計・見積日・有効期限を商談の項目として追加。承認フローが必要なら上長承認の自動通知も設定できる。

受注フェーズ

商談フェーズを「受注」に変えた時点で、受注管理が始まります。このタイミングでFlowを活用すると、後続業務の担当者への通知・発注タスクの自動生成が可能です。

Salesforceでできること
受注確定の自動処理
商談フェーズが「受注」になったとき、自動で発注担当者にタスクを割り当て・通知。受注情報を受注オブジェクト(カスタム)へコピーする処理も設定できる。
実装のポイント
フェーズ変更トリガーの設計
商談フェーズ「受注確定」を条件にFlowを起動。発注担当者への通知・発注期限の自動セット・ステータス項目の更新を一括で処理する。

発注・納品フェーズ

受注後の発注管理・納期追跡は、カスタムオブジェクトで実現します。「発注レコード」を商談・受注に紐づけることで、どの案件の発注がいつ完了するかを一覧で管理できます。

Salesforceでできること
発注・納期の一元管理
仕入先・発注日・発注金額・納期・入荷ステータスをカスタムオブジェクトで管理。複数仕入先に分かれる案件も、案件ごとにまとめて把握できる。
実装のポイント
納期アラートの設定
納期3日前になったら担当者にメール通知するFlowを設定。「未入荷」のまま納期を過ぎた案件をダッシュボードでリストアップする。

請求・入金フェーズ

請求書の発行自体はExcelや会計ソフトで行うケースが多いですが、「いつ請求したか」「入金を確認したか」というステータス管理はSalesforceで行うと、請求漏れ・入金確認漏れを防げます。

Salesforceでできること
請求ステータスの管理
請求日・請求金額・入金予定日・入金確認日をレコードに記録。未入金の案件を一覧化して、月末の入金確認業務を効率化できる。
実装のポイント
入金確認ダッシュボード
「請求済み・未入金」の案件一覧と合計金額をダッシュボードに表示。入金予定日を過ぎた案件には色で警告を表示する設計が効果的。

段階的に構築するアプローチ

一度にすべてを構築しようとすると、プロジェクトが大きくなりすぎて失敗します。次の順序で段階的に整備するのが現実的です。

⚠️ 「まず受注後もすべてSalesforceで管理したい」という要望はよく聞きます。しかし一度に全フェーズを構築しようとすると、要件整理だけで数ヶ月かかります。フェーズを分けて、動くものを早く作ることを優先してください。

  1. フェーズ1——商談管理(引合〜受注)のみ。多くの企業がここまでは対応済み
  2. フェーズ2——受注確定時の通知・発注タスク自動生成(Flowで実装)
  3. フェーズ3——発注・納期管理をカスタムオブジェクトで整備
  4. フェーズ4——請求ステータス・入金管理を追加
POINT

フェーズ2(受注確定時の自動通知)は、比較的短期間で実装でき、効果がすぐに実感できます。「受注したのに発注が漏れる」という問題を抱えている企業は、ここから始めることをおすすめします。

まとめ:受注後管理こそSalesforceの真価が出る

Salesforceを「営業管理ツール」として受注前だけで使っている企業は、まだ半分しか活用できていません。受注後の発注・納期・請求まで一気通貫でつなぐことで、Salesforceは初めて中小企業の基幹業務システムになります

一度に全体を構築する必要はありません。フェーズを分けて、まず一番困っている部分から整備を始めることが、長期的に業務基盤を作る最短経路です。