「あの部材、どこに発注するんだっけ?」「単価はいくらだったかな?」——こういった問いに、特定の担当者しか答えられない状態は、属人化の典型です。その担当者が不在だと発注が止まり、退職すれば情報ごと失われます。

この記事では、住宅リフォーム会社で発注業務の属人化をSalesforceで解消した事例を紹介します。手配品ごとに「どこにいくらで発注するか」をマスタとして整備し、誰でも迷わず正しく発注できる仕組みをつくりました。

支援の概要

業種
住宅リフォーム会社
課題
発注先・単価の情報が特定担当者の頭の中にあり、属人化していた。担当者不在時に発注業務が滞る
支援内容
Salesforceに手配品マスタ(品目別の仕入先・単価・発注条件)を整備。誰でも正しく発注できる仕組みの構築
期間
約2ヶ月
主な成果
発注業務の属人化が解消。担当者が変わっても同じ品質で発注できるようになった

導入前の状況:発注業務が特定の担当者に依存していた

この会社では、工事に使う部材・資材の発注を、長年担当してきた特定のスタッフが担っていました。そのスタッフは「どの品目をどの仕入先に、いくらで頼むか」を経験で把握しており、その知識がどこにも文書化されていませんでした。

▼ 導入前の発注業務の問題点
1
発注先・単価が担当者の記憶に依存
「この部材はA社、あの部材はB社」という情報が文書化されておらず、担当者に聞かないとわからない状態
2
担当者不在時に発注が止まる
休暇・退職・急な離席のたびに「あの人に聞かないとわからない」が発生。場合によっては発注が遅れる
3
発注単価がバラバラになる
別の担当者が発注すると、仕入先の選択や単価の交渉条件が異なり、コストが安定しない
4
発注履歴が担当者のメールに散在
どの案件で何をどこに発注したかが、担当者のGmailの送信履歴にしか残っておらず、会社として管理できていない

💡 属人化の怖さは「今は回っている」ことです。担当者がいる間は問題が見えにくく、不在・退職になって初めて組織の弱さが露呈します。

何が問題だったのか

この会社の本質的な問題は、「発注に必要な情報が組織の資産になっていなかった」ことです。

▼ BEFORE(導入前)
  • 発注先・単価が特定担当者の記憶にしかない
  • 担当者不在で発注業務が止まることがある
  • 別の人が発注すると単価・仕入先がバラバラになる
  • 発注履歴がGmailの送信箱に分散している
  • 「どこに何をいくらで頼んでいるか」を把握している人がいない
▼ AFTER(導入後)
  • 手配品マスタで仕入先・単価・発注条件を一元管理
  • 誰でもマスタを参照して正しく発注できる
  • 発注単価・仕入先の選択が標準化された
  • 発注履歴がSalesforceに蓄積される
  • 管理者が全体の発注状況をいつでも把握できる

構築した仕組みの概要

支援では、Salesforceにカスタムオブジェクトで「手配品マスタ」を構築しました。品目ごとに発注先・単価・発注条件を登録し、発注担当者がマスタを参照しながら発注できる仕組みです。メール送信自体は引き続き手動ですが、「何をどこにいくらで頼むか」をマスタから確認できるため、担当者に依存しない体制が実現しました。

▼ 導入後の発注業務フロー
1
案件の手配品をSalesforceで確認
受注した案件に紐づく手配品リストを開く。各品目に「推奨仕入先・単価・発注条件」がマスタから自動表示される
2
マスタを参照して発注メールを作成・送信
仕入先・単価・発注条件はマスタに記載されているため、誰でも迷わず発注メールを作成できる。メール送信は手動で行う
3
発注実績をSalesforceに記録
発注日・発注先・数量・単価・希望納期をSalesforceに入力。発注履歴が会社の資産として蓄積される
4
発注状況をSalesforceで一元把握
全案件の発注状況(未発注・発注済み・納期確定)がSalesforce上でリアルタイムに確認できる。管理者も担当者に聞かずに把握できる
▼ 手配品マスタに登録した主な情報
  • 品目名・品番・仕様(標準的な規格・サイズなど)
  • 推奨仕入先(第1候補・第2候補)と担当者連絡先
  • 標準単価・発注ロット・リードタイム目安
  • 発注時の注意事項(特記事項・仕入先固有のルールなど)

変わったこと

① 誰でも正しく発注できるようになった

「この部材はどこに頼むんですか?」という質問が不要になりました。Salesforceのマスタを開けば仕入先・単価・注意事項がすべて確認できるため、経験の浅い担当者でも迷わず発注できます。担当者の異動・休暇・退職があっても、発注業務が止まらない体制が整いました。

② 発注単価が標準化された

以前は担当者によって発注単価にばらつきがありました。マスタに標準単価を登録したことで、誰が発注しても同じ条件で仕入れられます。仕入れコストの把握と管理が、経営者・管理者にとってもしやすくなっています。

③ 発注履歴が会社の資産になった

Gmailの送信箱に分散していた発注記録が、Salesforceに集約されるようになりました。「あの案件で何を発注したか」「あの仕入先にはいつ頼んだか」をすぐに検索・確認でき、過去の実績が次の発注の参考になっています。

この事例から学べること

この改善で核心になったのは、「業務知識を人の頭から組織の仕組みへ移す」という発想です。

属人化とは、担当者が優秀なのではなく、情報が組織の資産になっていない状態です。どれほど有能なスタッフでも、その人の頭にしかない情報は、退職や異動の瞬間に失われます。マスタという「情報の置き場」をSalesforceに作ることで、知識を組織全体で共有できる状態になります。

💡 「あの人に聞けばわかる」という状態は、組織のリスクです。Salesforceへの情報集約は、属人化を解消するための最も現実的な手段の一つです。

発注業務に限らず、「担当者の経験・記憶に頼っている業務」はどの会社にも存在します。まずどの業務に属人化リスクがあるかを棚卸しし、優先順位をつけて仕組み化していくことが、組織としての安定性につながります。