「あの部材、どこに発注するんだっけ?」「単価はいくらだったかな?」——こういった問いに、特定の担当者しか答えられない状態は、属人化の典型です。その担当者が不在だと発注が止まり、退職すれば情報ごと失われます。
この記事では、住宅リフォーム会社で発注業務の属人化をSalesforceで解消した事例を紹介します。手配品ごとに「どこにいくらで発注するか」をマスタとして整備し、誰でも迷わず正しく発注できる仕組みをつくりました。
支援の概要
- 業種
- 住宅リフォーム会社
- 課題
- 発注先・単価の情報が特定担当者の頭の中にあり、属人化していた。担当者不在時に発注業務が滞る
- 支援内容
- Salesforceに手配品マスタ(品目別の仕入先・単価・発注条件)を整備。誰でも正しく発注できる仕組みの構築
- 期間
- 約2ヶ月
- 主な成果
- 発注業務の属人化が解消。担当者が変わっても同じ品質で発注できるようになった
導入前の状況:発注業務が特定の担当者に依存していた
この会社では、工事に使う部材・資材の発注を、長年担当してきた特定のスタッフが担っていました。そのスタッフは「どの品目をどの仕入先に、いくらで頼むか」を経験で把握しており、その知識がどこにも文書化されていませんでした。
💡 属人化の怖さは「今は回っている」ことです。担当者がいる間は問題が見えにくく、不在・退職になって初めて組織の弱さが露呈します。
何が問題だったのか
この会社の本質的な問題は、「発注に必要な情報が組織の資産になっていなかった」ことです。
- 発注先・単価が特定担当者の記憶にしかない
- 担当者不在で発注業務が止まることがある
- 別の人が発注すると単価・仕入先がバラバラになる
- 発注履歴がGmailの送信箱に分散している
- 「どこに何をいくらで頼んでいるか」を把握している人がいない
- 手配品マスタで仕入先・単価・発注条件を一元管理
- 誰でもマスタを参照して正しく発注できる
- 発注単価・仕入先の選択が標準化された
- 発注履歴がSalesforceに蓄積される
- 管理者が全体の発注状況をいつでも把握できる
構築した仕組みの概要
支援では、Salesforceにカスタムオブジェクトで「手配品マスタ」を構築しました。品目ごとに発注先・単価・発注条件を登録し、発注担当者がマスタを参照しながら発注できる仕組みです。メール送信自体は引き続き手動ですが、「何をどこにいくらで頼むか」をマスタから確認できるため、担当者に依存しない体制が実現しました。
- 品目名・品番・仕様(標準的な規格・サイズなど)
- 推奨仕入先(第1候補・第2候補)と担当者連絡先
- 標準単価・発注ロット・リードタイム目安
- 発注時の注意事項(特記事項・仕入先固有のルールなど)
変わったこと
① 誰でも正しく発注できるようになった
「この部材はどこに頼むんですか?」という質問が不要になりました。Salesforceのマスタを開けば仕入先・単価・注意事項がすべて確認できるため、経験の浅い担当者でも迷わず発注できます。担当者の異動・休暇・退職があっても、発注業務が止まらない体制が整いました。
② 発注単価が標準化された
以前は担当者によって発注単価にばらつきがありました。マスタに標準単価を登録したことで、誰が発注しても同じ条件で仕入れられます。仕入れコストの把握と管理が、経営者・管理者にとってもしやすくなっています。
③ 発注履歴が会社の資産になった
Gmailの送信箱に分散していた発注記録が、Salesforceに集約されるようになりました。「あの案件で何を発注したか」「あの仕入先にはいつ頼んだか」をすぐに検索・確認でき、過去の実績が次の発注の参考になっています。
この事例から学べること
この改善で核心になったのは、「業務知識を人の頭から組織の仕組みへ移す」という発想です。
属人化とは、担当者が優秀なのではなく、情報が組織の資産になっていない状態です。どれほど有能なスタッフでも、その人の頭にしかない情報は、退職や異動の瞬間に失われます。マスタという「情報の置き場」をSalesforceに作ることで、知識を組織全体で共有できる状態になります。
💡 「あの人に聞けばわかる」という状態は、組織のリスクです。Salesforceへの情報集約は、属人化を解消するための最も現実的な手段の一つです。
発注業務に限らず、「担当者の経験・記憶に頼っている業務」はどの会社にも存在します。まずどの業務に属人化リスクがあるかを棚卸しし、優先順位をつけて仕組み化していくことが、組織としての安定性につながります。