CRMツールを探すと、必ず名前が挙がる2つがあります。SalesforceとHubSpotです。どちらも「顧客管理・営業管理」のツールとして紹介されますが、設計思想も得意な用途もまったく異なります

結論を先に言うと、「営業プロセスを柔軟に管理・自動化したい」ならSalesforce、「マーケティングと営業をシンプルにつなぎたい」ならHubSpotが向いています。ただしこの判断は、会社の規模・業種・IT体制によって変わります。この記事では、中小企業が選択に迷わないよう、4つの軸で比較します。

この記事でわかること
  • SalesforceとHubSpotの根本的な設計の違い
  • 費用・機能・運用負荷・カスタマイズ性の4軸比較
  • 「Salesforceを選ぶべき企業」「HubSpotを選ぶべき企業」の具体的な判断基準
  • どちらにも当てはまらないケースへの対処

まず前提:2つのツールは「目的」が違う

SalesforceとHubSpotは、もともとの設計目的が異なります。この違いを理解しておくと、比較表の数字だけで判断する誤りを防げます。

観点 Salesforce HubSpot
出発点 営業支援(SFA)として誕生。顧客・商談管理が核 インバウンドマーケティングとして誕生。集客・リード獲得が核
強みの領域 営業プロセス管理・業務自動化・データ活用・基幹業務との連携 メールマーケティング・LP作成・問い合わせ管理・マーケ〜営業の連携
想定ユーザー 営業・管理部門・経営者 マーケティング担当・インサイドセールス
拡張性 カスタムオブジェクト・Flowなど高い拡張性。業種・業務に合わせて形を変えられる マーケ・営業・CSの各Hubを組み合わせる構造。Salesforceほどの業務カスタマイズは難しい

簡単に言うと、Salesforceは「業務の仕組みを作るプラットフォーム」、HubSpotは「マーケ〜営業の流れをスムーズにするツール」です。この違いを踏まえて4軸で比較します。

4軸で比較する

①費用

プラン Salesforce HubSpot
無料プラン なし(30日トライアルのみ) あり(CRM基本機能・連絡先管理など)
最安有料プラン Starter Suite:約3,000円〜/ユーザー/月 Starter:約2,400円〜/月(2ユーザーまで)
中規模向け Pro Suite:約10,000円〜/ユーザー/月 Professional:約9,600円〜/月〜(コンタクト数で変動)
初期構築費用 50〜300万円程度(業務カスタマイズの規模による) 10〜100万円程度(マーケ設定・CRM整備の規模による)
コスト特性 ユーザー数×単価のため、人数が増えるほど高くなる コンタクト(見込み客)数で変動。ユーザー数は比較的安価
POINT

ライセンス単価だけ比べるとHubSpotが安く見えますが、Salesforceのユーザー数が少ない場合は逆転することもあります。また、HubSpotはコンタクト数が増えると費用が跳ね上がるため、見込み客リストが多い企業は注意が必要です。

②機能と得意な業務

業務 Salesforce HubSpot
顧客・取引先管理 ◎ 詳細なカスタマイズが可能 ○ シンプルで使いやすい
商談・案件の進捗管理 ◎ フェーズ設定・予実管理が柔軟 ○ 基本的なパイプライン管理は可能
メールマーケティング △ Marketing Cloudが別途必要(高額) ◎ 標準搭載。シーケンス・ステップメールが得意
LP・フォーム作成 △ 別途ツールが必要なケースが多い ◎ ノーコードで作成可能
業務自動化(Flow相当) ◎ Flowで高度な自動化が可能 ○ ワークフローで基本的な自動化は可能
レポート・ダッシュボード ◎ 柔軟なカスタムレポートが作れる ○ 標準レポートは充実。カスタマイズは限定的
在庫・発注・受注後管理 ◎ カスタムオブジェクトで業務に合わせて設計できる ✕ 営業・マーケ以外の業務管理は苦手
外部システムとの連携 ◎ AppExchangeや豊富なAPI連携 ○ 主要ツールとの連携は充実

③運用負荷・導入のしやすさ

HubSpotは「使い始めるまでの敷居が低い」ことが最大の強みです。無料プランからすぐに使い始められ、設定画面もわかりやすい。マーケ担当者が自分でLP・フォーム・メールを作れるよう設計されています。

一方、Salesforceは初期設定に専門知識が必要です。「入れるだけ」では動かず、業務に合わせた設計・構築が前提になります。ただしその分、一度整備すれば業務の骨格として機能します。

観点 Salesforce HubSpot
導入のしやすさ △ 設計・構築に専門知識が必要 ◎ 無料から始められ、設定も直感的
社内管理者の負担 △ Adminの学習コストがある ○ 比較的学習しやすい
定着のしやすさ △ 設計次第。設計が良ければ定着しやすい ○ UIがシンプルで現場に受け入れられやすい
長期的な拡張性 ◎ 業務の変化に合わせて育てられる ○ マーケ・営業の範囲では拡張できる

④カスタマイズ性

Salesforceの最大の強みは、業務に合わせてデータ構造・プロセス・自動化を自由に設計できることです。在庫管理・発注マスタ・受注後の案件管理など、標準的なCRM機能の範囲を超えた業務まで対応できます。

HubSpotはマーケティングと営業の連携に特化した設計で、その範囲では使いやすい。しかし「CRM以外の業務もSalesforceで一元管理したい」という要求には応えられません。

「Salesforceを選ぶべき企業」vs「HubSpotを選ぶべき企業」

Salesforceが向いている企業
  • 営業・受注・発注・在庫など複数の業務を一元管理したい
  • 業務フローが複雑で、カスタマイズが必要
  • 将来的に基幹業務システムとして育てたい
  • 経営ダッシュボードや詳細なレポートが必要
  • 外部の専門家(コンサル)を使って構築できる
  • 製造業・建設業・卸売業など、CRM以外の業務も多い
HubSpotが向いている企業
  • インバウンドマーケティングに力を入れている
  • LP・メールマーケティング・問い合わせ管理をまとめたい
  • まず無料で試してから判断したい
  • IT担当者がおらず、できるだけ自社で運用したい
  • 営業・マーケの連携改善が主な目的
  • BtoBのSaaSや専門サービス業で、営業プロセスがシンプル

⚠️ 「HubSpotの無料プランから始めてSalesforceへ移行する」という流れを選ぶ企業もあります。ただし、HubSpotで蓄積したデータをSalesforceへ移行するコストは無視できません。最初から長期的な方向性を決めておく方が、結果的に安く済むケースが多いです。

どちらにも当てはまらない場合は

「HubSpotほど単純ではないが、Salesforceほど大げさにしたくない」という声もよく聞きます。こうした場合の選択肢を2つ紹介します。

選択肢①:Salesforce Starter Suiteから始める

Salesforceの最安プラン(約3,000円〜/ユーザー/月)は、基本的な顧客管理・商談管理・メール機能を備えています。HubSpotと似た価格帯で、将来的にSalesforceの機能を使い切れる環境から始められます。小規模に構築して、必要になったら拡張するアプローチです。

選択肢②:HubSpotとSalesforceを連携させる

実は、HubSpotとSalesforceは公式の連携機能を持っています。「マーケティングはHubSpot、営業・受注管理はSalesforce」という役割分担で両方使う企業もあります。ただし連携設定・データ同期の管理に手間がかかるため、中小企業にとってはオーバースペックになりやすい構成です。

まとめ:目的から逆算して選ぶ

SalesforceとHubSpotの選択は、「どちらが優れているか」ではなく「自社の目的に合っているか」で決まります。

中小企業の場合、「今だけ」ではなく「3年後の業務規模・管理したいデータ」を想定して選ぶことが重要です。導入後の乗り換えは想像以上にコストがかかります。迷ったときは、どんな業務課題を解決したいかを整理してから判断してください。