「Salesforceを導入することになったが、今まで使っていたExcelの顧客リストや案件データをどうやって移せばいいのか」——データ移行は、多くの中小企業が初めて直面する技術的な壁です。
結論からいうと、Excelデータのインポート自体はそれほど難しくありません。難しいのは「インポート前のデータ整備」です。汚いデータをそのまま移行すると、Salesforceの中も汚くなります。この記事では、データ移行の全体手順と、失敗を防ぐための準備を解説します。
- Salesforceへのデータ移行の全体的な流れ(4ステップ)
- 移行前に必ず行うデータクレンジングの内容
- インポートに使えるツールの種類と使い分け
- 「移行してよいデータ」と「移行しなくてよいデータ」の判断基準
- よくある失敗パターンと対処法
まず確認:どのデータを移行するか決める
すべてのExcelデータをSalesforceに移行する必要はありません。移行前に「何を移すか」を整理することが、工数と品質の両面で重要です。
移行すべきデータ
- 顧客・取引先情報——会社名・担当者名・連絡先・住所など、今後も使い続ける基本情報
- 進行中の商談・案件——現在対応中の案件は移行しないと業務が止まる
- マスタデータ——仕入先・単価・商品情報など、業務の基盤になるデータ
移行しなくてよいデータ
- 過去の完了済み案件——参照が必要なものだけ選んで移行。全件移行は作業量が増えるだけ
- 個人用メモ・一時的な計算結果——Salesforceで管理する必要がない情報
- 精度が低い古いデータ——5年以上更新されていない顧客情報など、正確性が担保できないもの
データ移行の工数は件数に比例します。「迷ったら移行する」という判断は誤りです。「迷ったら移行しない」を原則にして、本当に必要なデータだけを持ち込む方が、Salesforceの品質を高く保てます。
4ステップで進めるデータ移行
社内に散在しているExcelファイルをすべて洗い出し、「何がどこにあるか」を一覧化します。担当者ごとに別々のファイルを持っているケースでは、重複や矛盾が必ず存在します。
棚卸しで確認すること:
- ファイルの場所・管理者・最終更新日
- 含まれているデータの種類(顧客・案件・商品など)
- 件数の目安
- 移行対象か否かの判断
- 棚卸しをせずに最初に見つけたファイルだけで移行を進め、後から「別のExcelにも顧客データがあった」と判明する。
データ移行で最も時間がかかり、最も重要な工程です。Excelデータをそのままインポートすると、Salesforce内にゴミデータが大量に発生します。
クレンジングで行う主な作業:
- 重複データの統合——同じ会社が「株式会社○○」「(株)○○」「㈱○○」など表記ゆれで複数登録されているケースを統一する
- 必須項目の補完——会社名はあるが電話番号・住所が空欄のレコードを補完するか、移行対象から外す
- フォーマットの統一——電話番号のハイフンあり/なし、郵便番号の形式、日付の書き方などを揃える
- 不要データの削除——退職した担当者・廃業した取引先・誤入力のレコードを除外する
- Salesforceの項目名への対応付け——ExcelのA列「会社名」→Salesforceの「取引先名」のように、どの列がどの項目に対応するかをマッピングする
- クレンジングを省略してインポートした結果、同じ顧客が10件以上重複登録され、後から手作業で統合する羽目になる。
- 日本語の会社名に全角・半角が混在し、Salesforceの検索で引っかからなくなる。
クレンジング済みのデータをCSV形式に変換し、Salesforceへインポートします。使うツールはデータ量と複雑さによって選択します。
中小企業の場合、ほとんどのケースでデータインポートウィザードかData Loaderで対応できます。
- 本番環境に直接インポートし、失敗したときに戻せなくなる。必ずサンドボックス(テスト環境)で試してから本番へ。
- インポート後の確認を省略し、件数や内容のずれに気づかないまま運用を始める。
インポート完了後、以下の観点でデータを確認します。
- 件数の一致——インポートしたCSVの行数とSalesforce上のレコード数が一致しているか
- サンプルチェック——10〜20件を無作為に抽出し、元のExcelと照合する
- 関連付けの確認——取引先と取引先責任者・商談が正しく紐づいているか
- 文字化けの確認——日本語が正しく表示されているか(CSVのエンコードがShift-JISかUTF-8かで変わる)
- CSVをUTF-8で保存したが、Salesforceへのインポート時にエンコードを指定し忘れて文字化けが発生する。
- 確認を省略してExcelのファイルを削除し、後からデータの誤りに気づいたとき参照元がない。
移行作業のタイムライン目安
データ量・品質・社内の対応リソースによって変わりますが、中小企業の一般的なデータ移行にかかる期間は以下の通りです。
| 工程 | 期間目安 | 主な担当 |
|---|---|---|
| データの棚卸し・移行対象の選定 | 1〜3日 | 社内担当者 |
| データクレンジング | 1〜3週間(データ品質による) | 社内担当者(外部サポートあり) |
| マッピング設計・インポート | 1〜3日 | 外部パートナー推奨 |
| 移行後確認・修正 | 2〜5日 | 社内担当者 |
⚠️ データクレンジングは予想より時間がかかります。「Excelが1ファイルだから1日で終わる」と思っていたのに、重複チェックや表記ゆれの修正で2週間かかった、というケースは珍しくありません。スケジュールには余裕を持たせてください。
まとめ:データ移行は「準備8割・作業2割」
Salesforceへのデータ移行で覚えておいてほしいことは1つです。
移行作業(インポート)そのものより、移行前のデータ整備に時間と労力をかけること——これが高品質なデータ移行の鉄則です。
- 移行するデータを絞り込む(迷ったら移行しない)
- クレンジングを徹底する(重複・表記ゆれ・空欄を整理)
- 必ずサンドボックスで試してから本番へ
- インポート後に件数・内容を必ず確認する
- 元のExcelはすぐには削除しない(移行後3ヶ月は保管する)
データ移行は導入作業の中でも地味で時間のかかる工程ですが、ここをきちんとやるかどうかが、Salesforceの長期的な品質を左右します。焦らず丁寧に進めることが、結果として最短経路になります。