「Salesforceを導入することになったが、今まで使っていたExcelの顧客リストや案件データをどうやって移せばいいのか」——データ移行は、多くの中小企業が初めて直面する技術的な壁です。

結論からいうと、Excelデータのインポート自体はそれほど難しくありません。難しいのは「インポート前のデータ整備」です。汚いデータをそのまま移行すると、Salesforceの中も汚くなります。この記事では、データ移行の全体手順と、失敗を防ぐための準備を解説します。

この記事でわかること
  • Salesforceへのデータ移行の全体的な流れ(4ステップ)
  • 移行前に必ず行うデータクレンジングの内容
  • インポートに使えるツールの種類と使い分け
  • 「移行してよいデータ」と「移行しなくてよいデータ」の判断基準
  • よくある失敗パターンと対処法

まず確認:どのデータを移行するか決める

すべてのExcelデータをSalesforceに移行する必要はありません。移行前に「何を移すか」を整理することが、工数と品質の両面で重要です。

移行すべきデータ

移行しなくてよいデータ

POINT

データ移行の工数は件数に比例します。「迷ったら移行する」という判断は誤りです。「迷ったら移行しない」を原則にして、本当に必要なデータだけを持ち込む方が、Salesforceの品質を高く保てます。

4ステップで進めるデータ移行

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STEP 1
データの棚卸し——移行対象を確定する

社内に散在しているExcelファイルをすべて洗い出し、「何がどこにあるか」を一覧化します。担当者ごとに別々のファイルを持っているケースでは、重複や矛盾が必ず存在します。

棚卸しで確認すること:

  • ファイルの場所・管理者・最終更新日
  • 含まれているデータの種類(顧客・案件・商品など)
  • 件数の目安
  • 移行対象か否かの判断
⚠ よくある失敗
  • 棚卸しをせずに最初に見つけたファイルだけで移行を進め、後から「別のExcelにも顧客データがあった」と判明する。
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STEP 2(最も重要)
データクレンジング——Salesforceに入れる前の整備

データ移行で最も時間がかかり、最も重要な工程です。Excelデータをそのままインポートすると、Salesforce内にゴミデータが大量に発生します。

クレンジングで行う主な作業:

  • 重複データの統合——同じ会社が「株式会社○○」「(株)○○」「㈱○○」など表記ゆれで複数登録されているケースを統一する
  • 必須項目の補完——会社名はあるが電話番号・住所が空欄のレコードを補完するか、移行対象から外す
  • フォーマットの統一——電話番号のハイフンあり/なし、郵便番号の形式、日付の書き方などを揃える
  • 不要データの削除——退職した担当者・廃業した取引先・誤入力のレコードを除外する
  • Salesforceの項目名への対応付け——ExcelのA列「会社名」→Salesforceの「取引先名」のように、どの列がどの項目に対応するかをマッピングする
⚠ よくある失敗
  • クレンジングを省略してインポートした結果、同じ顧客が10件以上重複登録され、後から手作業で統合する羽目になる。
  • 日本語の会社名に全角・半角が混在し、Salesforceの検索で引っかからなくなる。
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STEP 3
インポート——ツールを選んでデータを投入する

クレンジング済みのデータをCSV形式に変換し、Salesforceへインポートします。使うツールはデータ量と複雑さによって選択します。

データインポートウィザード
推奨:件数が少ない場合
Salesforce標準搭載。最大5万件まで対応。UIが直感的で、マッピング設定も画面で確認できる。初めてのインポートに最適。
Data Loader
推奨:大量件数・複雑な移行
Salesforce公式の無料ツール。5万件超のデータや、複数オブジェクトへの同時投入に対応。設定がやや複雑で、PC環境構築が必要。
外部ETLツール
推奨:複雑なデータ変換が必要な場合
複数システムのデータ統合・変換が必要な場合に使用。専門知識が必要なため、外部パートナーに依頼するケースが多い。

中小企業の場合、ほとんどのケースでデータインポートウィザードかData Loaderで対応できます。

⚠ よくある失敗
  • 本番環境に直接インポートし、失敗したときに戻せなくなる。必ずサンドボックス(テスト環境)で試してから本番へ。
  • インポート後の確認を省略し、件数や内容のずれに気づかないまま運用を始める。
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STEP 4
移行後確認——データの正確性を検証する

インポート完了後、以下の観点でデータを確認します。

  • 件数の一致——インポートしたCSVの行数とSalesforce上のレコード数が一致しているか
  • サンプルチェック——10〜20件を無作為に抽出し、元のExcelと照合する
  • 関連付けの確認——取引先と取引先責任者・商談が正しく紐づいているか
  • 文字化けの確認——日本語が正しく表示されているか(CSVのエンコードがShift-JISかUTF-8かで変わる)
⚠ よくある失敗
  • CSVをUTF-8で保存したが、Salesforceへのインポート時にエンコードを指定し忘れて文字化けが発生する。
  • 確認を省略してExcelのファイルを削除し、後からデータの誤りに気づいたとき参照元がない。

移行作業のタイムライン目安

データ量・品質・社内の対応リソースによって変わりますが、中小企業の一般的なデータ移行にかかる期間は以下の通りです。

工程 期間目安 主な担当
データの棚卸し・移行対象の選定 1〜3日 社内担当者
データクレンジング 1〜3週間(データ品質による) 社内担当者(外部サポートあり)
マッピング設計・インポート 1〜3日 外部パートナー推奨
移行後確認・修正 2〜5日 社内担当者

⚠️ データクレンジングは予想より時間がかかります。「Excelが1ファイルだから1日で終わる」と思っていたのに、重複チェックや表記ゆれの修正で2週間かかった、というケースは珍しくありません。スケジュールには余裕を持たせてください。

まとめ:データ移行は「準備8割・作業2割」

Salesforceへのデータ移行で覚えておいてほしいことは1つです。

移行作業(インポート)そのものより、移行前のデータ整備に時間と労力をかけること——これが高品質なデータ移行の鉄則です。

データ移行は導入作業の中でも地味で時間のかかる工程ですが、ここをきちんとやるかどうかが、Salesforceの長期的な品質を左右します。焦らず丁寧に進めることが、結果として最短経路になります。