Salesforceの説明で「カスタムオブジェクトを使って〜」という言葉を見たことはないでしょうか。技術的に聞こえて敬遠しがちな言葉ですが、概念自体はシンプルです。
カスタムオブジェクトとは、Salesforceに自分で作る「独自のデータ管理表」のことです。Excelでいえば「新しいシートを追加する」ようなイメージに近く、コードは不要でクリック操作だけで作れます。
この記事では、カスタムオブジェクトの概念から使いどころ、実際の作り方の流れまでを解説します。
- オブジェクトとは何かをExcelのたとえで理解できる
- 標準オブジェクトとカスタムオブジェクトの違い
- カスタムオブジェクトをいつ・どんな場面で使うべきか
- 業種別のカスタムオブジェクト活用例
- 作成の基本的な流れ(ノーコードで完結する)
そもそも「オブジェクト」とは何か
Salesforceでは、データを「オブジェクト」という単位で管理します。難しく聞こえますが、Excelのシート1枚に相当するものと考えると理解しやすくなります。
Excelで顧客一覧を管理するシートを作るとき、列として「会社名」「担当者名」「電話番号」「業種」などを設定しますよね。Salesforceのオブジェクトも同じ構造で、各列に相当するものを「項目(フィールド)」と呼びます。
オブジェクト = Excelのシート、項目(フィールド)= Excelの列、レコード = Excelの行。この3つの対応関係を押さえると、Salesforceの構造がぐっとわかりやすくなります。
標準オブジェクトとカスタムオブジェクトの違い
Salesforceには最初から用意されているオブジェクトと、自分で作るオブジェクトの2種類があります。
標準オブジェクト——最初から入っているデータ管理表
Salesforceを契約すると、最初から以下のようなオブジェクトが用意されています。
法人・顧客・取引先の会社情報を管理する
個人の担当者・連絡先情報を管理する
見込み案件・受注プロセスを管理する
まだ取引先化していない見込み顧客を管理する
問い合わせ・クレーム・サポート対応を管理する
電話・メール・面談の記録を管理する
カスタムオブジェクト——自分で作るデータ管理表
標準オブジェクトは汎用的に設計されているため、自社特有のデータをそのまま管理できない場面があります。そこで、自社の業務に合わせたオブジェクトを自分で作るのがカスタムオブジェクトです。
たとえば「物件」「機器」「号室」「研修プログラム」「契約書」といったデータは、標準オブジェクトでは管理しにくいため、カスタムオブジェクトとして追加します。
| 比較項目 | 標準オブジェクト | カスタムオブジェクト |
|---|---|---|
| 用意のされ方 | 最初から用意されている | 自分で作成する |
| 対象データ | 顧客・案件・担当者など汎用的なもの | 自社固有のデータ(物件・機器・製品ロットなど) |
| カスタマイズ | 項目の追加はできるが構造は変えられない | 項目・名称・関連付けを自由に設計できる |
| 作成方法 | — | ノーコード(管理画面からクリックで作成) |
| 活用例 | 営業活動・顧客管理・サポート対応 | 物件管理・設備台帳・契約管理・工程管理など |
カスタムオブジェクトをいつ使うべきか
すべての業務にカスタムオブジェクトが必要なわけではありません。以下の3つの判断基準を使うと、使う場面を見極めやすくなります。
- 標準オブジェクトに「自然に当てはまらない」データがある——「物件」「機器」「案件ごとの工程」など
- 複数の取引先・担当者・商談から参照されるマスタデータがある——「製品マスタ」「拠点マスタ」など
- 複数のレコードが1つの親に紐づく構造がある——「1棟のマンションに複数の号室がある」「1顧客に複数の契約がある」など
⚠️ 注意:「とりあえずカスタムオブジェクトを作る」は設計の複雑化を招きます。まず標準オブジェクトで管理できないか検討し、どうしても当てはまらない場合にカスタムオブジェクトを使うのが正しい順序です。
業種別:カスタムオブジェクトの活用例
中小企業がSalesforceを活用する場面で、よく使われるカスタムオブジェクトの例を業種別に紹介します。
物件名・所在地・賃料・専有面積・現況を管理し、商談(顧客)と紐付けて「誰がどの物件を検討したか」を追跡
商品コード・在庫数・仕入れ価格・販売価格を管理。受注商談と紐付けて在庫の引き当て状況を確認
利用者ごとの契約サービス内容・開始日・更新日を管理。更新時期の自動リマインド設定に活用
案件ごとの工程(着工・中間検査・竣工)と進捗状況を管理。商談と紐付けて工程の遅延を即座に把握
棟(物件)の下に号室を紐付ける階層構造で管理。入居者・空室状況・修繕履歴を号室ごとに記録
プログラム名・受講期間・受講人数・実施状況を管理。顧客(取引先)と紐付けて提供履歴を追跡
カスタムオブジェクトの作り方——基本的な流れ
カスタムオブジェクトはプログラミング不要で、Salesforceの管理画面からクリック操作だけで作成できます。
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1設定メニューから「オブジェクトマネージャ」を開く
画面右上の歯車アイコン→「設定」→「オブジェクトマネージャ」の順に進みます
-
2「作成」→「カスタムオブジェクト」を選択する
オブジェクトの表示ラベル(例:「物件」)とAPI参照名(例:「Property__c」)を入力します
-
3必要な項目(フィールド)を追加する
「テキスト」「数値」「日付」「選択リスト」などの型から選んで項目を追加します。Excelの列を設定するイメージです
-
4関連付け(リレーション)を設定する
「この物件オブジェクトを取引先(顧客)と紐付ける」など、他のオブジェクトとの関係を設定します
-
5ページレイアウトを設定して使い始める
画面にどの項目をどの順番で表示するかを設定すれば、実際のデータ入力が始められます
カスタムオブジェクトを作ること自体は難しくありません。難しいのは「何を作るか・どう設計するか」という設計の判断です。作り始める前に、管理したいデータの構造(親子関係・項目の種類・他オブジェクトとの関連)を紙に書き出してから着手することをお勧めします。
カスタムオブジェクトを使うときの注意点
作りすぎに注意する
「このデータも管理したい」と思うたびにカスタムオブジェクトを追加していくと、オブジェクト間の関係が複雑になり、運用が困難になります。まず標準オブジェクトでの管理を試み、どうしても当てはまらない場合にのみカスタムオブジェクトを追加するという原則を守ることが重要です。
プラン制限を確認する
作成できるカスタムオブジェクト数はSalesforceのプランによって異なります。Starter Suiteでは10個、Professional Editionでは50個が上限です。中小企業の標準的な用途では十分な数ですが、大量のオブジェクトを想定している場合は事前に確認が必要です。
削除は慎重に行う
カスタムオブジェクトに蓄積されたデータがあると、オブジェクトを削除するとデータも失われます。不要になったオブジェクトは削除前に必ずデータをエクスポートし、バックアップを取ってから作業してください。
まとめ:カスタムオブジェクトはSalesforceを自社仕様にする道具
カスタムオブジェクトは、Salesforceを「汎用的な営業ツール」から「自社の業務に合ったシステム」に変えるための仕組みです。
- 標準オブジェクトで管理できないデータが出てきたときに追加する
- コードは不要で、管理画面からクリック操作で作成できる
- 設計をしっかり考えてから作ることが、後の運用のしやすさを決める
「カスタムオブジェクトが必要かどうか」「どう設計すればよいか」で迷ったときは、自社の業務フローを整理するところから始めることをお勧めします。