「利用者の情報は紙の台帳とスタッフの記憶が頼り」「訪問の記録と営業の情報がバラバラで、引き継ぎができない」——介護・医療周辺サービスの現場でよく聞く課題です。

介護・医療周辺サービスは、利用者との長期的な関係管理と、スタッフ間の情報共有が業務の核になります。これはまさにSalesforceが得意とする領域です。この記事では、介護・医療周辺サービスの中小企業がSalesforceで業務を整備した事例を3つ紹介します。

この記事でわかること
  • 介護・医療周辺サービスに共通する管理課題
  • Salesforceが担える役割と、専用システムとの使い分け
  • 訪問介護・医療機器販売・健康管理サービスの活用事例
  • 導入時に気をつけるべき個人情報・セキュリティの考え方

介護・医療周辺サービスに共通する業務課題

介護・医療周辺サービスは、利用者の状態が変化し続けるなかで複数のスタッフが連携して対応するという特性があります。情報管理の仕組みが弱いと、対応品質にばらつきが生じます。

課題 現場の状況
利用者情報の属人化 担当スタッフが変わると「前回どんな対応をしたか」「利用者の好みや禁忌事項」がわからなくなる
契約・更新管理の煩雑さ 介護保険の更新時期・サービス利用契約の期限管理が紙やExcelに散在し、更新漏れが起きやすい
家族・関係機関との連絡管理 利用者本人だけでなく、家族・ケアマネジャー・医療機関との連絡履歴が追えない
稼働状況の把握 スタッフの訪問件数・稼働率・売上が即座に出せない。経営判断に必要な数字を集計するのに時間がかかる
新規獲得の仕組みがない ケアマネジャーや病院からの紹介が主な新規獲得だが、関係先へのアプローチが属人的なままになっている

Salesforceが介護・医療周辺サービスで担える役割

介護分野には介護記録・請求・シフト管理に特化した専用システム(カイポケ・ほのぼのNEXTなど)がすでにあります。Salesforceはこれらを置き換えるものではなく、「利用者・家族・関係機関との関係管理」と「新規獲得・営業管理」の部分を担う役割が適しています。

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利用者・家族の情報一元管理

利用者の基本情報・状態の変化・対応履歴・家族連絡先を一箇所で管理し、スタッフ間で即座に共有

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契約・更新期限の管理

サービス利用契約・介護認定の更新時期をSalesforceで管理し、期限前に自動でリマインドを送信

🤝
紹介元・関係機関の管理

ケアマネジャー・病院・地域包括支援センターとの連絡履歴と関係強化の活動を記録・追跡

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経営ダッシュボード

稼働率・売上・新規獲得件数・利用者数の推移をリアルタイムで把握し、経営判断に活用

事例1:訪問介護事業所——利用者情報とケアマネ関係を一元化

事例 01 | 訪問介護
スタッフ12名の訪問介護事業所が、引き継ぎ問題を解消
業種・規模訪問介護事業所・スタッフ12名
利用者数約60名
導入プランStarter Suite

導入前の状況

訪問介護の記録は専用の介護ソフトで管理していましたが、利用者ごとの「状態変化の履歴」「家族への連絡内容」「サービス調整の経緯」は担当者のノートや口頭伝達に頼っていました。スタッフの入れ替わりが多い業種であることも重なり、引き継ぎのたびに「前の担当が何をしていたかわからない」という問題が起きていました。

Salesforceで整備した内容

  • 利用者を「取引先(Account)」として登録し、家族・ケアマネジャー・医療機関の担当者を「取引先責任者(Contact)」として紐付け
  • 家族への連絡・ケアマネジャーとの打ち合わせを「活動(Activity)」で記録。タイムラインで時系列の対応履歴を確認できるように整備
  • 介護認定の有効期限・サービス利用契約の更新日をカスタム項目で管理し、期限の90日前に担当者へ自動でリマインダーメールを送信するFlowを設定
  • 紹介元のケアマネジャー事業所も取引先として管理し、どの事業所から何件紹介があったかをレポートで可視化

導入後の変化

スタッフ交代時の引き継ぎに要していた時間が大幅に短縮されました。「この利用者はどんな方か」をSalesforceで確認すれば5分で把握できるようになり、引き継ぎ書を作る手間がなくなりました。更新漏れもゼロになり、契約更新の時期に管理者が慌てることがなくなっています。

POINT

介護ソフトは「サービスの記録・請求」が目的。Salesforceは「関係者との関係管理・営業活動の記録」が目的。この役割分担を明確にすることが、二重入力を防ぐカギです。

事例2:医療機器・福祉用具販売会社——顧客フォローと提案機会の管理

事例 02 | 医療機器・福祉用具販売
法人顧客へのフォローアップと提案機会をSalesforceで管理
業種・規模医療機器・福祉用具販売・スタッフ15名
主要顧客介護施設・病院・クリニック
導入プランProfessional Edition

導入前の状況

主要顧客は介護施設・病院・クリニックで、担当営業がそれぞれの顧客情報をExcelと手帳で管理していました。「この施設は次の設備更新がいつ頃か」「前回どんな提案をしたか」が担当者しか知らない状態でした。担当者の退職時に顧客情報が失われた経験もあり、情報の組織共有が急務でした。

Salesforceで整備した内容

  • 法人顧客(介護施設・病院)を取引先で管理。施設の規模・ベッド数・設備状況・担当者情報をカスタム項目で記録
  • 訪問・提案・見積もりの履歴を活動として記録し、「最終訪問日から3ヶ月以上経過している顧客リスト」をレポートで自動抽出
  • 設備の更新見込み時期をカスタム項目で管理し、更新時期の6ヶ月前に営業担当者へアプローチのタスクが自動作成されるFlowを設定
  • 商談オブジェクトで「提案中」「見積提出」「受注」「失注」のステージ管理を導入し、月次の受注予測をダッシュボードで確認できるように整備

導入後の変化

「フォローアップの抜け漏れ」が解消され、長期間放置していた顧客から受注が取れるケースが出てきました。設備更新時期の管理から提案機会が事前に見えるようになり、受注予測の精度も改善しています。担当者交代時の引き継ぎもSalesforceを見れば完結するようになり、顧客情報の属人化が解消されました。

工夫した点

医療・介護分野は担当者の異動や退職が多く、顧客側の窓口が変わることも頻繁にあります。そのため、「担当者(取引先責任者)」の記録だけでなく、その担当者の役職・権限・影響力もカスタム項目で管理しました。意思決定者が誰かを記録しておくことで、アプローチの精度が上がっています。

事例3:健康管理・予防医療サービス——法人契約の継続管理と提案サイクル

事例 03 | 健康管理・予防医療サービス
法人の健康診断・ウェルネスプログラム提供会社が継続率を改善
業種・規模健康管理サービス・スタッフ20名
主要顧客中小企業・法人
導入プランProfessional Edition

導入前の状況

年次の健康診断や法人向けウェルネスプログラムを中小企業に提供していましたが、年次更新のタイミング管理が担当者任せでした。更新時期を忘れて連絡が遅れ、他社に切り替えられた経験が複数回あります。また、追加サービスの提案機会も担当者の判断次第で、組織的な提案のサイクルが存在しませんでした。

Salesforceで整備した内容

  • 法人顧客の「契約開始日」「更新日」「契約内容」「利用人数」「担当窓口」をSalesforceに集約
  • 更新日の4ヶ月前に「更新提案アクション」のタスクが自動で担当者に割り当てられるFlowを設定
  • 前年の利用状況(参加率・実施結果)をカスタムオブジェクトで記録し、更新提案時の根拠として活用
  • 「健康診断のみ」の顧客に対してウェルネスプログラムを提案する「アップセル候補リスト」をレポートで自動生成し、四半期ごとにアプローチを実施
  • 全顧客の継続率・解約率・平均単価の推移をダッシュボードで毎月確認できる体制を整備

導入後の変化

更新連絡の遅延が解消され、解約率が改善しました。アップセル候補リストからの提案も実施率が上がり、追加サービスの売上が増加しています。経営者が「今月の継続率と解約見込み数」をダッシュボードで毎朝確認できるようになり、早期の対策が取れるようになっています。

POINT

法人向けのサービスは「更新」が収益の核です。更新日管理と事前アクションをFlowで自動化することが、継続率改善の最短ルートです。担当者の「うっかり」に依存しない仕組みを作ることが重要です。

介護・医療周辺サービスでSalesforceを導入するときの注意点

個人情報・医療情報の取り扱いルールを先に決める

介護・医療周辺サービスでは、利用者の健康状態・障害区分・家族構成といった要配慮個人情報を扱う場面があります。Salesforceに何を入力してよいか、何は専用システムに留めるかを導入前にルール化しておくことが必要です。

Salesforceはセキュリティ機能が充実しており、アクセス権限の設定・通信の暗号化・ログの記録などは標準で備わっています。ただし、どこまでの情報をSalesforceに登録するかは、自社のプライバシーポリシーと照らし合わせて判断してください。

⚠️ 注意:診療録・介護記録の原本は専用の法定システムで管理し、Salesforceには「連絡履歴・対応のメモ・営業活動の記録」に絞って登録するのが安全です。医療法・介護保険法上の記録義務は専用システムで担いましょう。

専用システムとSalesforceの役割分担を明確にする

介護ソフト・電子カルテ・健診システムとSalesforceを並行して使う場合、情報が重複する項目が必ず出てきます。「利用者の基本情報はどちらに入力するか」「更新があったときはどちらを正とするか」を先に決めておかないと、二重入力の手間が増え、定着しなくなります。

スタッフのITリテラシーに合わせた設計をする

介護・医療周辺サービスは、ITに不慣れなスタッフが多い現場でもあります。Salesforceの入力項目を最小限に絞り、「毎日の訪問後に3項目だけ入力する」というシンプルな運用から始めることが定着のカギです。最初から多くの情報を入力させようとすると、現場から「面倒くさい」と拒否されます。

まとめ:Salesforceは「関係管理と営業効率化」で力を発揮する

介護・医療周辺サービスでのSalesforce活用は、専用システムの代替ではなく補完の役割です。

どの業種でも共通しているのは、「担当者の記憶と経験に頼っていた部分を仕組み化する」という目的です。スモールスタートで始めて、定着を確認しながら機能を広げていくことをお勧めします。

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